メンチカツ

ツレとケンカした。

今日は、ツレが腸閉塞を患ってからというもの毎月行っている定期健診の日だった。

便秘薬を処方されるのだが、仕事中に腹がゴロゴロするのを嫌がるツレが、薬を飲まないのだ。
あと、飲み忘れてることも多い。
で、「古い薬は怖いから」と、捨てる。
また新しい薬をもらってくる。
飲まない。捨てる。
この繰り返しである。


もちろんただではない。
高いぞ、薬代。


私がツレに薬を飲めと毎回催促をすればよいのかもしれないが、いい大人なんだから自分の健康くらい自分で管理してほしい。




とりあえず、薬をもらってきては捨てるを繰り返すツレに、「まさかまた薬もらってきたの?」と聞いたら、ツレがムッとした。

聞き方がまずかったらしい。
だろうなとは思っていたが。
私としても内心無駄な出費を繰り返すツレにイライラしていたから、言葉にも棘が出た。
しかし、私が間違っているとも思えない。飲まない薬をもらって捨てるとか、何の意味があるのか。にも関わらずツレが機嫌を損ねたことに、私としても納得がいかずムッときたのだ。


そこから冷戦開始。
ツレも私も謝る気はないので、ひたすら沈黙したまま各々部屋を掃除し始める。

ツレは溜めに溜めたプリントの山をシュレッダーにかけ、私は床の掃除やテーブルの上の片付け。

ツレは職場のプリントを処分しながら、時折「くそっ」と吐き捨てる。
こういう時のツレはがっつり掃除に集中してくれるが、お互いに精神的には不健康な状態だ。


……うん。
もう、俺が大人になるわ。




「買い物行ってくるわ」とツレに言うと、「応」と返ってきたので、背中に抱きついてやった。
そうすると一瞬ばつの悪そうな顔をしてから、ツレが心の緊張というか、怒りが和らいだような雰囲気を放った。

その後襲われたが。
いや、セクシーな意味ではないよ。
乗っかられて布団被されて蒸し焼きにされそうになっただけw
ギャーギャー言いながらじゃれあうのは、私達の『仲直り』だ。



ツレ
「なんでイラついたのか自分でも分からん」


「俺の言い方が気に障ったんじゃないの?」

ツレ
「そうかも」
「で、整理してたプリント見てたらだんだん『なんで俺がこんな仕事やらされなきゃなんねーんだよ』って職場への怒りがわいてきて、もう何が何やら」


ツレの特徴だ。
私への怒りの矛先を、違う何かにすり替えようとするのだ。
私も同じようなことをするので、分かる。
あれは、凄く遠回しに「イライラするけど、君には怒ってないからね。でもホントはチョットだけ怒ってるんだから。」という、相手に怒りを向けたくない思いと、それを分かってほしい思いと、でもちょっとは反省というか、罪悪感を感じてほしいという思いとが混ざりあった行動なのだ。

わかってる。わかってるさ。
だからぎゅむぎゅむしてるんじゃないか。




その後買い物に出かけ、ひき肉とパン粉を買って夕飯はメンチカツにした。
揚げ物を作るのがハチャメチャに苦手な私が、よくもこんな難易度高めのやつに挑戦したな、と思う。

理由はちゃんとある。
メンチカツはツレの好物なのだ。
そして、
ツレが好きな「異世界食堂」という飯テロ小説の最初に出てくるのが、メンチカツだったのだ。


仲直りした日くらいは、挑んでみてもいいだろう。




肉だねが柔らかいので卵液をつけるのにかなり苦労したが、出来は良かったようだ。
口直しでスーパーの惣菜メンチカツも一緒に買ってきたが、「スーパーのより海苔蔵が作ったやつの方が断然うまい」と言われてしまった。
くそっ。そんなこと言われると嬉しくて泣いちゃうぞ。

こういう時、ツレと暮らしてて、本当に良かったと思う。
良かったというか、ありがたい。
幸せを噛み締める。



しょーもない喧嘩もするが、それでもこうして仲直りできるのは、相手がツレだからだ。
そして、ツレが、私を切り捨てずにいてくれるからだ。


ありがたいね。ホント。
あーもうクソ。泣きそうだよ。