ツレ

ちょっとツレのことで色々。
喧嘩とか別れるとかいう話ではない。

軽い話と重い話がある。
どっちもするから、重い話が苦手な方は読むのを前半だけにとどめておいてください。



□軽い話

私は以前妹に、

「ツレさんのどこが好き?」

っていう、おそらく女子の定番であろう恋ばなを振られたことがある。


しばらく考えて結論が出たので、

「全部」

って答えたら、


「全部って、何と何と何?」

と返ってきた。


全部は全部だ。
見た目も中身も、性能も人となりも、全部。
一挙手一投足だ。

ただ、たとえばツレと同じようなルックスでツレと同じように賢くてツレみたいにきゃわゆい誰かがいたとして、その人がツレの代わりになるかといえば、それは違う気がする。
俺はツレの外見だけと付き合ってるわけじゃないし、中身だけと付き合ってるわけでもない。
全部ひっくるめてツレだから、ツレと付き合ってる。
だから、どこが好きかと聞かれれば、「全部」としか答えようがない。

ツレと何もかも一緒の人であれば目移りすることもあるかもしれないが、それは多分「ツレ(のコピー)」を好きになってるだけだと思う。


しかしそれだと満足しないのが妹。

「全部のなかにはたとえば何があるの?」

と食い下がる。
なんでそうまでして聞きたい……。


仕方がないので、

「優しいところ」

と答える。
すると、

「どう優しいの?」

とくる。

本当は、冬の夜の肌寒い時に上着を貸してくれたり、遠出の旅行をノートにびっしり計画してくれたり、自宅からは遠いのにわざわざ俺んちまで送ってくれたり、遠距離になってからは時間も金もかかるのにわざわざ俺のために月に一度は会いに来てくれたりと、優しくて大好きなエピソードはいっぱいある。
劣等感に苛まれて「俺には価値がない、ツレにはもっと相応しい相手がいる」って言った時に、「じゃあその君を好きな俺はなんなんだ」って怒られたこととか、
何があっても必ずお別れの時にはハグしてくれたこととか、ほんとに色々ある。

けど、そのいきさつをほじくり返されるだろうことは目に見えてるし、それを言うには結構な精神力を使うことが分かっているから、

「道路の内側を歩かせてくれる」

とだけ答えておく。




──こんなやりとりをしたんだよ、まあ本当はこうこうこうで色々あるんだけどね、と、今日出張前のツレに話していた。

そしたらそれを聞いていたツレが

「恥ずかしい」

と言って毛布にくるまってしまった。



───なんでだ。

事実でしょうが。



というかかわいいなその反応。

調子に乗った私は、もう思い付く限りの思い出を話してやった。そしたらツレが「ヤメロー」と悶えていた。


私がツレを撫でくりまわしたのは言うまでもない。











□重い話

ツレのご両親が、俺を飯に誘ってくれた。

俺とツレは「どっちかが結婚するまでルームシェアしてる仲」ということになっている。
そんな俺に興味を持ってくれたようだ。

俺としてはもう何を言われるかとかボロが出ないかとか、諸々緊張でガチガチだったが、想定していた最悪の事態にはならなかった。始終和やかで、多分かなり気を遣っていただいたのだと思う。
美味しい飯を食わせてもらって、美味しいお酒を飲ませてもらった。

で、

「いつも(ツレ)をありがとうね」


と、言われた。





これが来た。

ずっしりと。



その時は「いえいえ、私こそツレさんにお世話になりっぱなしで~」とか「早く結婚相手見つけないとだめですね~」とか言って切り抜けたが、

ツレ(出張)とご両親と別れて家に帰って一人になって、涙が出てきた。




ツレは育ちがいい。

あの上品なご両親を見ていれば分かる。
ツレが大切に大切に育てられてきたことが伝わってくる。



俺は、そんなご両親からツレを奪ったわけだ。




それだけじゃない。

きっとご両親は、孫の顔も見たかったことだろう。




もしかしたら我々のことも感付いていらっしゃるのかもしれない。
でも、彼らは何も言わなかった。
ただ、「いつも(ツレ)をありがとう」とだけしか。



あんまりにも申し訳なくてな。


本当にツレはすごい奴なんだ。
知識も半端ないし頭も切れるし背も高いし、性格がにじみ出ているかのような優しい表情をしている。
責任感が強くて、でもユーモアに溢れている。

ご両親の自慢の息子だろう。



それを思うと、本当に心が痛い。



俺なんかがツレと付き合っていること、

ご両親を騙していること、

俺のしていること全てが罪深い。




ツレの優しさが痛い。

ご両親の優しさが痛い。


綺麗な彼らに泥まみれの手で触れてる俺はなんなんだ。







つくづく、自分が情けない。




酔ってんのかな。

ホント、なんなんだろうな俺は。