来訪者

私の帰宅直後に、インターホンが鳴った。

家に入る前に、こつ、こつと階段をのぼる足音が聞こえていたので、住人と顔を合わせるのが嫌な私はさっさと部屋に入ったのだが。



ピンポーン。


ピンポーン。





家に入って数秒後。

繰り返し、インターホンが鳴る。
お前、部屋にいるのは分かってんだぞとでも言いたげに。




基本、私はインターホンには出ない。

宗教勧誘や新聞その他の売り込みが鬱陶しいのだ。教会員の訪問もあるしな。
事前の来訪が分かっている時以外は居留守である。
居留守がばれてようが、出てやる義理はない。勝手にピンポンしていればいい。

まあ、平日だと日中はいないわけだから、そもそもインターホンに出くわすこと自体がそんなにないっちゃないんだけどね。
たまーに今日みたいな、微妙に遅い時間帯に来訪がある。



んで。

そーっとドア窓から外を覗く。
人数や年齢・服装でだいたいの見当はつく。
二人なら宗教勧誘、スーツなら営業、年配ならNHKだ。
さてドア向こうの人は何者ぞ?












……見えねえ。





窓の死角にいやがる。

意図してそこに陣取ったなら大したもんだ。





──ああ、こりゃ例のストーカー教会員かな。

ご丁寧に俺の帰りを待ち伏せていたってか。




そんなことを思った私は、ルンルンで台所に引き返し、牛刀包丁を素振りしながら扉に向かった。



素早く内鍵を下ろし、同時にドアノブに手をかけ、もう片方の手の牛刀包丁をぐっと引いて突きのフォーメーションにする。



バン!!







誰もいねえ。






待たせ過ぎたのか、来訪者は帰ってしまわれた。

まああんまりお待ちいただくと、私が殺人罪で検挙されていたかもしれないから、結果としては良かったのかもしれない。




んで、そのままポストを確認すると、簡易書留の不在通知が。



あーーーー。

郵便局のお兄ちゃんだったのか。
そりゃ申し訳ないことをした。




あのまま引き返してくれてほんとよかった。

うっかり無実の勤勉なお兄ちゃんを刺すところだった。




できれば次からは「郵便局でーす」と言っていただいたり、ドア前に立っていただけるとありがたい。

私も妄想で突沸しないよう気を付けます。