美しい鶏

※鶏の話しかしません
※鶏はいいぞ


もう20年どころか、30年前のことだ。


小学校に、とても美しい鶏がいたんだ。

東天紅みたいな見た目とでかさだったんだけど、本当に東天紅だったのかどうかは分からない。

※気になって調べてみたら、あいつ多分コーチンだと判明。東天紅より黄金色部分が多いあたりがまさに。


そいつはいつも一羽で、広い飼育小屋に悠々と居座っていた。
時に、どうやって登ったの?というくらい高い位置の棒の上にぬん……と乗ってることもあった。

私はそいつが大好きで、休み時間になるたびに会いにいったものだ。



つやつやと輝く、なめらかな羽根。
もっこりと膨らんだ、厚みのある胸。
普通の鶏の倍は太いであろう、ごつくて頑丈そうなすらっと伸びた脚。
ゆったりと優雅に歩く王者のような風格。
黄金色の身体にふさふさとたなびく黒い尾羽。



「なにかね?私の美しさに見惚れているのか?」
「構わんぞ、我が肢体とくと見るがよい。喜べ」
「撫でたいか?撫でてもよいのだぞ、特別に許してやる」

とか言われてるような、威風堂々っぷり。
全然人にビビらないし、飯を要求してくるわけでもない。
ただ、静かにそこに佇んでいるのだ。
その謎の気高さ、鶏だけど好きだぞ。



隣の小屋には大量のチャボがいたんだけど、あいつら「飯飯飯!!飯よこせゴルァ!!!」って感じだったからな……

ついでにさらに隣の小屋には大量のウサギがいたんだけど、そいつら常に穴のなかにいたから……




とにもかくにも、私はこの堂々たる美しい鶏が大好きだった。


結局あいつは私が卒業するまでそこにいた。
鶏ってあんなに長生きだったんだな……。
奴はずっと一人ぼっちだったけど、それもどこ吹く風。隣の小屋でチャボが騒いでも、涼しい顔でまるで意に介さない。
強い。


奴にはお世話になった。
夏も冬もそこにいて、悠々とその姿を晒していた。
私はその姿を拝見しに、鶏様にご挨拶に向かったものだ。
そして奴はいつでも

「また来たのか。よいぞ、さあ今日もとくと見よ」
「どうだ。私は今日も美しかろう」

と、謎の偉そうさをもって私を迎えてくれた。
私はあの王様のような鶏が好きだった。


高校までのことなんかろくなことがなかったので思い出したくもないが、あの場違いに気高い謎の鶏様のことは今でもよい思い出として胸に残っている。



テレビでひよこの映像を見かけたので、少し思い出してしまった。
私は小学生時分から、王様とか貴族みたいな存在が好きだったらしい。

気高いの最高です。
かっこええわ。